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名古屋高等裁判所 昭和53年(ラ)18号 決定

抗告人

有限会社磯野建材店

右代表者

磯野秀好

右代理人

加藤謹治

相手方

美濃慧

主文

原決定を取消す。

抗告人と相手方間の名古屋地方裁判所昭和五二年(ヨ)第一五二七号自動車仮差押申請事件につき、昭和五二年一〇月一七日同裁判所が抗告人に対し名古屋法務局に金七万円を供託(供託番号昭和五二年金第一七二九三号)させてした担保決定はこれを取消す。

申立費用は第一・第二審とも相手方の負担とする。

理由

抗告代理人は、抗告の趣旨及び理由として、別紙(一)抗告申立と題する書面(写)のとおり申立てた。

記録によれば、昭和五二年一〇月一七日、抗告人の申請により、抗告人が相手方に対して有する砂・かめ等の売掛残債権金二四万九、七〇一円の内金二一万円を請求債権として、相手方所有自動車(登録番号ナゴヤ・四四・二・九七二〇車台番号KP三七―〇一五〇八二)につき、金七万円の担保を供することを条件として仮差押決定(名古屋地方裁判所昭和五二年(ヨ)第一五二七号)がされ、抗告人において右担保を提供して右決定が執行されたこと、その後本案訴訟(同庁昭和五二年(ワ)第二三八一号)が係属し、昭和五二年一一月二二日右本案訴訟において別紙(二)訴訟提起後和解調書(写)のとおり右当事者間に和解が成立したことが認められる。

ところで、一般に本件のごとく担保供与者が和解において相手方から金銭の給付をうける旨約されたような場合には、和解の本来の精神から考えると、当該和解内容から特に相手方において損害賠償請求権を留保する趣旨がうかがえるがごとき特段の事情のない限り、相手方において金銭給付を約しながら他方損害賠償につき担保権を行使する趣旨があると解することは当事者の真意に反するものというべく、もとより本件の場合記録を検討してもかかる特段の事情の存在をうかがわしめるような懲憑は、これを見出すことができない。

それゆえ本件の場合前記担保の事由は右和解成立によりやんだものと認めるのが相当であり、抗告人の担保取消の申立を却下した原決定は失当として取消を免れない。

よつて民訴法四一四条、三八六条、九六条、八九条に従い、主文のとおり決定する。

(村上悦雄 上野精 春日民雄)

別紙(一)〈省略〉

別紙(二)  和解条項

一、被告は、原告に対して、買掛金等として、金一八万円の支払債務のあることを確認し、これを、次のとおり、原告代理人方に持参又は、送金して支払う。

(一) 昭和五二年一一月末日、九万円、同年一二月末日、九万円。

二、被告は、前項の分割支払を、一回以上怠つたときは、期限の利益を失い、そのときに残債務を、ただちに支払う。

三、被告は、原告に対して、名古屋地方裁判所昭和五二年(ヨ)第一五二六号の、担保取消に同意し、該決定に対する抗告権を放棄する。

四、原告は、その余の請求を放棄する。

五、訴訟費用は、当事者各自の負担とする。

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